抵当権のついた不動産を買った人は消滅時効を「援用」できる!
登記簿を見ると、昭和の時代の抵当権が抹消されていない不動産を贈与してもらったんですけど、この 抵当権抹消の時効だと主張 できるんでしょうか。
抵当権そのものの消滅時効ですね。
抵当権がなくなったことの時効を「援用」できるのは、法律用語でいう第三取得者だけだから消滅時効は主張できますよ。
注意が必要なのは、相続人です。相続で取得したとなると、抵当権の消滅時効の援用はできません。
抵当権自体の消滅時効を利用できる者は限定されている
抵当権が付いた土地や建物を、売買で購入したり、贈与を受けたりすることはありえることです。
しかし、その抵当権もお金を借りた債務者が支払いを終えていたりしたら抵当権そのものがなくなっていることになるので、抵当権自体は誰でもないことが主張できることになりますね。
そうではなく、抵当権そのものが消滅している、と時効主張できるとなると、登記簿に記載されている抵当権者(お金を貸している人)は担保がなくなってしまうことになります。
ということは、抵当権の消滅時効は、債務者や抵当権設定者(=物上保証人)は主張できないことになります。
民法396条に書かれているのはそういうことです。
(抵当権の消滅時効)
第三百九十六条 抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。
要するに債務者・設定者ではない、第三取得者(購入したり・贈与を受けた人)は、抵当権そのものの消滅時効が援用できるのです。
第三取得者というと、売買で購入した人や、贈与で譲り受けた人などですね。
注意したいのは、相続で承継した相続人です。
この人は、法律用語でいう包括承継なので、債務者や設定者という地位も承継していることになるのです。
抵当権そのものの消滅は変わってる?
抵当権は民法上「物権」というカテゴリリーですが、「債権」がないと成立しないものです。
だから「債権」がなくなったら「物権」がなくなるっていうのが原則なんです。
でも、「抵当権そのものが消滅」というのは、債権が消滅していないのに、抵当権が消滅するっていう変わったものなんですね。
この抵当権抹消の消滅時効について、そのほかに条件があります。
- 抵当権の消滅時効の期間は、20年です
一般的には民法の条文でいう『権利を行使できる』時点から起算して20年間が過ぎることで消滅時効が完成します(民法166条1項・2項) - 抵当権そのものの消滅時効の起算点(始まり)は「滞納時」
「権利の行使」というのは、抵当権が実行されたときのことなので、「被担保債権の債務不履行時」=「被担保債権が滞納になった時点」です。
分割払いのローンなどの場合は、金額によって滞納した時点が変ってきてしまいますが、ほとんどの金融機関の融資約款は、ローンの一部滞納の時点で期限の利益喪失が適用されるようになっています。
支払いができなくなったら、のこりの全額も返してね、ってことですね。
そうなると、支払いが滞った時点で、ローンや融資などの残額全額について「滞納時点」になります。 - 抵当権そのものの消滅時効に「中断」というものがない
抵当権の消滅時効にを中断するっていのは、一般的には(債務の)「承認」をすることですが、「抵当権」(の負担)は「債務そのもの」でないので、消滅時効の「中断」にはあたらないと最高裁の昭和62年9月3日の判例でもでています。
債権が破産法上の免責許可決定を受けた場合も、抵当権は20年の消滅時効にかかる
抵当権は、被担保債権と持ちつ持たれつの関係にあるわけなんですね。
平成30年になって、その債権が破産法上の免責許可決定を受けた場合も、抵当権自体が、20年の消滅時効にかかる判例がでました。
→最高裁平成30年2月23日第二小法廷判決 建物根抵当権設定仮登記抹消登記手続請求事件
この場合には、民法396条ではなく、債務者及び抵当権設定者に対する関係でも、抵当権自体が民法167条2項所定の20年の消滅時効にかかる、と判旨にでています。
被担保債権が免責許可決定を受けるということは、『もう債権はないよ』と裁判所がお墨付きを与えたようなものですよね。
だから、その債権については、もう民法166条1項の「権利を行使することができる時」を起算点とする消滅時効の進行が考えられない、ということが理由のようです。
その不動産の価値がわかる
ローンを完済したりして抵当権抹消登記をすると、物件に担保がついていないことが登記簿上からもわかるので、物件査定をすると正確な財産の価値がわかります。
今がどれくらいの価値があるのか、売却したらいくらくらいになるのか、知りたいですよね。
ネットで依頼すれば、簡単に査定してくれます(抵当権抹消登記手続き前でもOK!)
もちろん費用は無料です。